氷河期エンジニア、セミリタイアはじめました

セミリタイアしたけど結局1年でサラリーマンに戻りました

会社には提案で変えられることと変えられないことがある

r25.jp

西野氏は会社というものをよく知らないで喋っているのではないだろうか。

売上に直結することなら提案は可能

西野氏が例に出しているような

僕は、「芸人が自分で直接仕事を募集できるクラウドファンディングサービスを作って、手数料15%を吉本に落とす仕組みにすれば、芸人も吉本もWin-Winになる」と大崎会長にメールしたんです。

こういった提案は、確かに受け入れられる可能性が高い。これは芸人自らが営業活動を行うという提案であって、会社からすれば売上アップが見込める話だからだ。

これは西野氏でなくとも普通に会社で行われていることで、提案によってインセンティブ制度が新たに出来るというのは珍しいことではない。

また、会社にも何らかのプラスが必要という視点は確かに大切だ。しかし、プラスになることしかやらないというのは働き方改革の趣旨からずれている

働き方改革では会社にとってマイナスとなることが求められている

働き方改革法案の中身は、主に労働時間の短縮と非正規雇用の待遇改善にある。

しかし、この二つは先ほど出てきた「クラウドファンディングで個人が営業活動を行う」といったものとは性質が異なり、会社側が損をする可能性の高いものとなる。

長時間残業は労働者にとっては悪夢だが、会社にとっては美味しい状況でもある。これにサービス残業が加わればより美味しく、持ち帰りで自主的にやってくれれば更に安全で美味しい。

正規雇用も大変美味しい存在だ。労働者保護を気にする必要なく、いつでも切れていつでも補充できる。昇進や昇給を気にする必要も無く、本人のキャリア的な価値が増加しにくいので、飼い殺しにしやすい。

こういったことを改善する際に「会社にとってはこんな良いことがありますよ」と提案しなければならないとするなら、一体どんな提案をすれば良いのだろうか。

「適度な労働時間にすることで生産性が高まりますよ」
「非正規の方のモチベーションアップに待遇を改善しましょう」
「結果的に良い人材が集まるようになりますよ」

良い点をアピールすることも出来るのだろうが、これらは全て可能性であり将来的な期待でしかない。

労働時間を減らして、しばらく様子を見ないと生産性の変化はわからない。モチベーションが上がったからといって、売上が上がる保証があるわけでもない。新たに採用した人材が、すぐに結果を出すと決まっているわけでもない。

「労働力の低下やコストの増加はありますが、将来的な期待がありますよ」という提案を素直に受け入れる経営者が、はたしてどれくらいいるだろうか。

そもそも労働者の意見なんて求めてない

労働者の働き方や待遇について、提案を受ける姿勢を持っている経営者ならまだ良い。しかし、多くの経営者は最初から労働者の意見なんて求めていない

経営者にとって、労働者は労働者でしかない。社員という言い方をすることで、まるで同じ目的を共にする仲間のような印象もあるが、労働者は経営者に雇用されて労働力を提供する人でしかない。同じ会社で働いていても、経営者と労働者は全くの別物である。

そんな、お金を払って使っているだけの労働者から意見など聞きたくないという経営者は少なくない。

意見を求めていない相手から「労働環境を改善しましょう、何故なら…」と言われても、聞く耳など持たないのは当たり前のことで、提案内容の良し悪しで「通る」「通らない」が決まると思うのは大間違いである。

労働基準法を厳しく運用する以外に改善策は無い

働き方改革で求められているのは、労働者の意識改革ではなく企業の意識改革だ。

日本では労働基準法の運用がぬるく、サービス残業など完全に違法とされる行為ですら厳しく処罰はされない。今回の働き方改革では残業時間規制に罰則が付いたが、元々罰則のあったサービス残業が世の中に溢れかえっている状態なのだから、実効性には疑問がある。

労働者側の提案が問題なのではなく、働き方改革の中身が問題なのではなく、国に労働者を守る気が皆無なのが問題なのだ。

まずは、今ある労働基準法の厳格な運用。また、交通事故などで悪質なものに対しては広義の意味で捉えて罪が適応されるように(煽り運転で暴行罪とか)、悪質な企業の過労死に対しては業務上過失致死傷を適用するなど、抑止力の強化で企業側の意識を変えなければ変えるのは難しいだろう。